あっせんによる解雇事案の解決について

  • 2018.04.05 Thursday
  • 18:14

解雇予告手当・未払い残業代

 当事務所では企業の方から様々な労務の相談を受ける機会があります。ビジネスを推進していく中で取引先との問題等も日々生じますが、社内での経営者の方と従業員さんのトラブルというものも実は珍しくないのです。特にトラブルが発生しやすいタイミングはやはり退職時ではないでしようか。解雇時での解雇予告手当の未払いや、残業代の未払い請求などは往々にして発生しやすい二大案件ではないかと思います。これらの問題の場合、労働基準法で厳格に要件が定められていますので、そこに該当するようなケースであれば会社側が義務を履行しなければならないということとなり、従業員さんの申告により労働基準監督官から是正勧告がされることもあります。これらの事案は何が問題なのか比較的判り易く、妥当な解決を見つけやすいものといえます。

不当解雇

 一方で問題の所在が見えにくく、妥当な解決を見つけづらい事案としては従業員さんが会社に対して「不当解雇だ」と主張するケースではないでしようか。例えば、Aさんという人がいてB社に入社したとします。Aさんは面接では感じが良かったのですが、いざ仕事をやらせてみると、覚えは遅いし、失敗ばっかりしています。C社長は1カ月我慢してAさんの成長を見守っていましたが、1カ月半の時点で堪忍袋の緒が切れてAさんに解雇を通告しました。C社長の理屈はこうです。「仕事をしっかりこなしての対価として給与を支払っているのだから、そもそも仕事をこなせない人に支払う給与は無いし、Aさんに代わってその部署にできる人を採用して配置したい。したがってAさんに辞めてもらうことは理屈としても問題無い」しかし一方でAさんはこう思っているかもしれません。「B社の求人では経験不問と謳っていたのだから当然、仕事に対する指導訓練についても未経験者であることを考慮した基礎からのものと思っていた。ところがC社長の指導方針は一度教えたことは一度で覚えるという方針をいかなる場合も貫徹させるもので、教え方も素人に教えるという感じではなく、ある一定の知識については常識で考えろという姿勢だった。自分としては未経験の分野だったので一回の指導で覚えられないこともあったかもしれないが仕事を覚えるために精一杯努力しており、決して怠けていたわけではない」こうなってくると二人の主張は当事者同士が言い合いをしても全くかみ合わないような気がします。このようなケースに対して全国各労働局において「あっせん」という制度があります。
 

あっせん

「あっせん」とは当事者の間に弁護士等の学識経験者である 第三者が入り、双方の主張の要点を確かめ、紛争当事者間の調整を行い、話合いを促進することにより、紛争の円満な解決を図る制度です。費用は無料となっています。当事務所でもこの「あっせん」を顧問先から依頼を受け会社の担当者とともに出席する機会が何回かありました。この制度は強制性がありませんので、会社の方で出席しないこととすれば打ち切りとなります。なかにはそのような選択をされる会社さんもあろうかと思いますし、場合によってはそれが会社にとっては正解の場合もあるのかもしれません。しかし、個別のケースによってはこの制度を利用したほうがよい場合もあります。例えば、従業員さんの怒りが大きく「あっせん」が打ち切りとなったとしても、次に何らかの行動にでられることが予想されるような状況でしたら、ここは早期解決ということを優先し原則1回で終了するこの制度を利用することにより解決をはかることが考えられます。紛争が長引くと一般的には会社が支払うこととなる解決金も高額となり、従業員さんのほうとしてもそのことを長期的に考え続けなければならない精神的負担が生じます。双方にとって持続的なストレスをもたらす紛争の長期化はできるだけ避けるにこしたことはありません。
 

労働審判

とはいえ「あっせん」への参加を選んだとしても必ずしも和解となるとは限りません。解決がはかられず、従業員さんが裁判所へ労働審判等への申し立てをするようなケースも生じます。労働審判は申立から40日以内に原則第一回の期日が指定されます。一般的には会社側は弁護士さん(代理人を立てる場合は原則弁護士さんに限られてきます)をたてることになると思いますのでこの短期間に労働事件を受任する弁護士さんを探し、会社としての主張を的確に伝えるのはなかなか大変な話になってくるかと思います。「あっせん」を経た場合のメリットとして「あっせん」を行うことで会社としての主張をある程度整理することができ、弁護士さんにお願いする際も会社として主張したい部分を明確に伝えやすいという点があります。一方、デメリットとして「あっせん」参加で解決しなかった場合、結局その時間が徒労に終わるという点や労働審判移行の際にはこちらの主張がある程度、相手に知れてしまっている(お互いに)といことが考えられます。
 
 いずれにしても万能の制度というものはありませんので、個々の事案によって検討していがさるをえないでしょう。そのなかで特に早期の解決という点を重視していくのならば、「あっせん」が申し立てられた際には参加を前向きに検討していくべきではないかなと思います。

 

原田労務事務所

労働保険年度更新

  • 2018.04.01 Sunday
  • 18:59

労働基準監督署

最近のニュースを見ると大手企業で残業代未払いや、三六協定を超えた違法な時間外労働を労働基準監督署が摘発していることがよく取り上げられています。労働基準監督署は労働基準法、安全衛生法が会社で順守されるよう、会社に立ち入り違反を是正指導していく役所ですが、正直、ちょっと前まではそんなに認知度は高くなかったと思います。ですが、ここ最近の報道で一挙に知名度があがっていっているのではないかと思います。

 

労災保険

一方で労働災害が発生した際の労災保険の給付を行っているのも実は労働基準監督署です。本来、会社は従業員さんが仕事に従事している際に生じた災害についてその補償の責を負うこととなっています。労災保険は会社に強制的に保険加入を義務付け、労災が発生し、本来、会社が従業員さんに補償すべき場面において、会社規模の大小等に左右されることなく、一律に従業員さんが得るべき補償を実現しています。
 

保険料

この労災保険の保険料ですが自動車保険などの一般の保険とは保険料を納める手続きが少し違います。労災保険料は年度更新と呼ばれる手続きで、雇用保険料と一緒に保険料算出し、支払います。例えば4月1日にお店を開き従業員さんを1人雇ったとします。その場合4月1日から来年の3月31日までにその従業員さんに支払う給与総額をまず計算します。次にその算出した金額に保険料率を掛けることにより概算保険料を算出して、先に支払うこととなります。でも、この1年でお店は予想以上に繁盛するかもしれません。そうなると人手がが足りなくなり従業員さんを増やさなければならなくなることもあるかもしれません。そういった時にはその都度、修正申告をし追加納付をしなければならないのでしょうか。例えばお店が雑誌に紹介され爆発的にお客さんが増え従業員さんを追加で7月から雇入れた場合、7月から翌年3月までに支払うであろう給与を算出し7月に修正申告をし追加で払い込む必要があるのでしょうか。もし、そうだとした場合、例えば7月のあまりの忙しさに音をあげて新人の従業員さんが10月で辞めてしまい、それ以降新たに雇い入れなかった時には更に修正が必要ということになるのでしょうか。実際の手続きでは増減が極端に大きくなければそのようなことはせず、4月から翌年3月までの実際に支払った賃金の合計により確定保険料を算出します。そして昨年に前払いした概算保険料と比較をし、その差額についてプラスであれば次年度の概算保険料から差し引き(還付を選ぶこともできます)、マイナスであれば次年度の概算保険料に加算して支払うことになります。これを毎年くりかえしていくことになります。

 年度更新の時期は毎年6月から7月10日までとなっています。社会保険の算定基礎届と時期が被るため、早めに賃金集計などの準備をすませておきましょう。以上、労働保険年度更新のお話でした。

 

原田労務事務

算定基礎届と年金事務所の調査

  • 2018.03.01 Thursday
  • 17:12

算定定基礎届

 

毎年6月になると日本年金機構から算定基礎届の封筒が届きます。健康保険、厚生年金の保険料は従業員さんの3か月間(4〜6月)の給与額により保険料の見直しがされます。これを定時決定といい送付された算定基礎届の用紙により行います。見直された保険料はその年の9月から翌年8月まで適用されます。通常は、会社のほうで自社の賃金台帳を基に作成し郵送もしくは持参して提出という流れとなります。
 

調査

ところが、この算定基礎の届けが賃金台帳、出勤簿、所得税徴収高計算書などの書類を持参のうえ日本年金機構の調査の対象となることがあります。この場合は、郵送ではなく、直接、管轄の年金事務所へ出向いていかなければならなくなります。ここでの調査では、当年の申告のみではなく、過去の申告についても適正であったかどうかを賃金台帳や出勤簿で確認されることとなります。

 

給与の申告についての調査

調査での確認事項は大きく2つあると思われます。一つは保険料の基となる給与の申告に誤りがないかという点で、もう一つは被保険者の適用に誤りはないかという点です。まずは給与の申告についてですが、よくあるケースとして以下の3つが考えられます。

ー蠹などで含めなければならないもの含めていない
⊃鏤改定を失念している
賞与支払届を失念している

 ,任茲あるのが通勤手当を含めていないというケースです。これは税金での非課税通勤費と混同してしまっていることが原因かと思われますが、社会保険においては必ず含めなければなりません。また、税などを控除した手取額をを申告しているケースも誤った取扱いとなるので注意が必要です。

 △砲弔い討禄抄醗さんの給与が昇(降)給等で大幅に変わったときに毎年1回行う定時決定を待たずに保険料見直しの必要なケースがありこれを随時改定といいます。随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。

(ア)昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。
(イ)変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
(ウ)3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。

 随時改定でよく漏れがあるケースとして、従業員さんが引越しをして通勤手当が変わった場合があります。通勤手当は上記(ア)にある固定的賃金に当たりますからこのような時は他の要件に該当していないか注意が必要です。

 については賞与に対しても社会保険料はかかり、支払った都度、賞与支払届をだす必要がありますが、それを失念しており、賃金台帳の賞与支払の記述により発覚するといったパターンです。
 

適用の誤りについての調査

以上、給与の申告の誤りについて述べてきましたが、前述しましたようにもう一点の大きな確認事項が被保険者の適用の誤りについてです。これについては以下の2のケースがよくあるものとなります。

A)資格取得対象の短時間労働者に資格取得をさせていない
B)資格取得日が適切になっいない

Aについてですが、日本年金機構では短時間労働者の社会保険適用の扱いについて「1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数が常用雇用者の4分の3以上」は被保険者の資格取得をしなけれはればならないとしています。また、被保険者数が501.人以上の企業については「―気僚蠶袁働時間が20時間以上雇用期間が1年以上見込まれることD其發侶邀曚8.8万円以上であることこ慇犬任覆い海函廚陵弖錣乏催する短時間労働者も被保険者の資格取得をしなければならないとしています。「パートさんに社会保険は関係ない」とか「夫の扶養なので社会保険は関係ない」といった認識で短時間の従業員さんを一律に社会保険の適用外としているケースがありますが、調査時にはこの点について賃金台帳、出勤簿などにより労働時間や賃金等を確認し、本来、資格取得をしなければならないパートさんの適用が漏れていないかをチェックします。漏れがあった場合には資格取得をするようにとの指導がされてくという流れとなります。

 Bについては社会保険では前述の短時間労働者で適用とならないケースを除いて常時使用される場合には被保険者としなければならず、入社時から被保険者とする必要があります。一方で2か月以内の期間で終了する労働契約の場合は被保険者とはならず、何らかの事由で当初の契約を延長した場合に、その延長時点から被保険者としなければなりません。この規定を勘違いしてか、試用期間は被保険者としなくて良いと誤解して試用期間終了後に被保険者としているようなケースが見受けられますがこの扱いは適当ではありません。特に、試用期間3カ月や4カ月のケースで試用期間終了後に被保険者の資格取得をしているようなケースですと賃金台帳の確認だけで不適切な扱いであることが発覚します。この点についても不適切な手続きとならないよう、正しい認識が必要かと思います。

原田労務事務所

最低賃金

  • 2018.02.05 Monday
  • 17:33

最低賃金改定の時期

毎年、9月下旬から10月くらいに最低賃金の改定がある。中小零細企業では、この最低賃金ぎりぎりでの給与設定をしているとこを結構見かけることがあり、最低賃金法違反とならないよう、特に変更の時期に注意をはらう必要がある。最低賃金は、細分化すると地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類あるのだが、ここでは地域別最低賃金(以後、最賃という)に絞って述べていくことにする。

時給の最低賃金

最賃は原則時間あたりの賃金(特定最賃には日額がある)で決定されるので、時給での支払いについては最賃以上であるかの判断は一目瞭然となる。つまり、時給900円だったとして、最賃が890円であれば、単純にその額を見比べるのみで基準を満たしていることが確認できるのである。

日給の最低賃金

では、日給の場合はどうであろうか。日給は、当該労働日の労務に対しての対価という契約であるので、その労働日の所定労働時間で除することによって時間あたりの対価が割り出されることとなり、当該額と最賃を比較することになる。このときよくあるのが業務開始から終了まで実働9時間(休憩を除いて)で常態的に就労させているという会社のケースだが、変形労働時間等の特殊な労働時間制を採用していなことを前提とした場合、所定労働時間は8時間となる。なぜなら労働基準法において1日の労働は8時間を超えてはならないとあり、例外的に労使協定を届け出ることによりそれ以降の労働が可能となることとなっているので、このようなケースでは8時間の所定労働時間に1時間の残業があったと捉えるべきだからだ。少し本筋から外れるが、この時、協定をだしていなければ、労働基準法に違反していることから、違法な残業ということとなる。また、8時間を超える労働に対しては2割5分以上の賃割増賃金の支払いが必要であるということが労働基準法に定められているので、それがなされていなければ、その点についても違法ということになる。

月給の最低賃金

次に月給のケースだが、基本的には日給の計算の場合と考え方は同様となり、金額を所定労働時間で除することによって時間当たりの金額を算出し、最賃の比較を行うこととなる。ただ、ここで日給のときと大きく異なるのは、1か月は暦日自体が各月により不均等なことから、当然労働日数も不均等となり、月所定労働時間は各月によりバラバラになるということにある。よって各月の所定労働時間は一般的に1か月平均所定労働時間を算出することになる。計算方法は1年間の労働日に1日の所定労働時間を乗じそれを12か月で除することによる。こうして算出された1か月平均所定労働時間で賃金を除することによって1時間あたりの賃金が計算され、最賃との比較ができることとなる。
ところで、実は最賃の対象となる賃金には除外すべき賃金があり、以下に列挙したものがそれにあたる。
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2) 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
これらの賃金については賃金から控除したうえでの計算を行う必要がある。精皆勤手当については注意が必要で、最賃計算では除外されるが、残業代計算のときは算定基礎に含まれることとなる。
そのほか最賃には減額の特例という制度がある。一定の場合に該当する場合には許可申請し許可が得られれば最賃を下回る金額での賃金の支払いも可能となるケースがある。一定のケースとは、心身に障害がありその障害により労働能力の発揮に支障がある労働者、非常に緊張の少ない監視や軽易な作業にあたる労働者、実作業と手待ち時間が交互に繰り返される作業に従事する労働者、といったケースが該当してくることになる。ただ、いずれの場合も細かな基準があり、一瞥して外形的にこのようなケースにあたるからといって必ず許可が得られるものではない。

最低賃金に対する調査

以上、最賃について大雑把に述べてきたが、最初にのべてきたように9月下旬から10月くらいが改定となる。監督機関である労働基準監督署も改定後、企業が適切に対処しているかという点に関心を持つと思う。労働基準監督官がふいに訪れる臨検という調査があるが、くれぐれも、そこで最賃違反を指摘されないように会社経営者は改定情報をしっかりチェックし、臨検に堂々と対応できるようにしていきたいものだ。

 

原田労務事務所

社長も入れる?!労災保険の特別加入とは

  • 2018.01.05 Friday
  • 17:27

労災保険は労働者の保険!

 労災保険での保険給付は仕事中、もしくは、通勤途上での負傷・疾病・障害・死亡等に対するものとされている。経営者は労働者を1人でも雇い入れれば労災保険の手続きをしなければならず、一部の事業を除き強制適用となっている。一方でこの労災保険の対象となっているのは労働者となっている。つまり、初めて従業員さんを1人雇い入れたとしてその日に労働基準監督署へ手続きにいくと、雇入れ日からその従業員さんは労災保険の給付対象となるが、社長、役員等については労働者ではないので労災保険の対象とはならないのだ。

中小事業主に潜む危険

 しかし、大企業はいざ知らず、中小零細企業での経営者は、決裁印を押したり、会議をやったりといったことに終始しているのではなく、他の一般従業員さんと同様に作業を行っていることも少なくない。当然、現場作業を行っている限り、作業中に何らかの怪我を負うリスクが生じるはずだ。では、仮にこのようなプレイングマネージャーとして働く経営者が、その作業を原因として怪我をした場合の治療費はどうなるのだろうか。
 
 この場合、前述のとおり、通常、労災保険は経営者を給付の対象とはしていないので、治療にあたって労災保険は使えない。では、健康保険はどうだろうか。健康保険は「業務外に起因する傷病」に対して療養の給付をする制度なので、結論として、たとえ労災保険に加入できなくても健康保険を使うことはできないということになる。ただし平成15年7月から特例として、―病が発生した当時に被保険者が5人未満の社会保険適用事業所の代表者等で、一般の従業員と著しく異ならない労務に従事しているような場合には、業務に起因して生じた傷病についても健康保険の給付対象とされることとなった。だが、この特例基準を満たさない会社の経営者は作業中の怪我の治療に対して、全額自己負担しなければならず、この部分のリスクについて何か手立てが必要となってくる。

特別加入制度

 この点、実は労災保険には任意的な特別加入制度が設けられており、企業規模が中小事業と認められれば経営者等でも加入することができるのだ。この手続きを予めとっておくことによって、いざというときの治療費については自己負担無しとなり、休業補償についても一定の要件に該当すれば支給される可能性がある。一方で、前述した健康保険の特例適用では休業時の所得保障は受けられないので、その点についても労災特別加入にメリットがあるといえる。
さて、中小事業主等の労災保険特別加入の手続きだが、実はこれは労働基準監督署では行えず、労働保険事務組合という厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体において、その手続きを行うこととなる。当事務所は大阪SR経営労務センターという労働保険事務組合の会員となっているので、特別加入を御希望の方にも対応できる体制となっている。御要望があれば、随時対応しているので、お問い合わせ願いたい。

 労災保険の保険料については雇用保険や社会保険のように従業員さんからの負担は無く、会社が100%持たなければならない。これは仕事中に生じた負傷・疾病・障害・死亡等の補償は使用者が行うべきと労働基準法で定められており、この補償責任を填補する制度として労災保険制度が構築されているからだ。しかし、事業主にとっては保険料を全額負担しながらも、自己のための保険料負担及び給付を受けることができないのだから、正直、おもしろくないのも事実だろう。労災保険の特別加入制度は実際のリスクヘッジとともに事業主にとってのそのような不満をを解消してくれる制度ともいえよう。

 

原田労務事務所

解雇の予告

  • 2017.12.05 Tuesday
  • 18:15

解雇とその制限

 解雇とは使用者からの労働契約の解約だ。有期契約の場合は期間到来で契約が終了するまでについて「やむを得ない事由」がある場合でなければ解雇することができないこととなっている。一方、無期契約の場合はというと「合理的な理由の有無」「社会通念上相当か否か」といった点で有効性が判断される。解雇についてはこのような制約以外にも色々と規制が存在するが、そのなかでも現場で特に問題となりやすい事案が解雇予告ではないだろうか。

解雇予告の場面

 解雇予告は労働基準法第20条により解雇時に少なくとも30日前の予告をするか、30日分以上の平均賃金(以後、解雇予告手当という)を支払うこととなっている。この時、問題となるのが「もう今日でクビだ」と経営者が即日解雇を行いながら、解雇予告手当を支払わないというケースだ。従業員数の少ない小規模事業所では一般的に社長と従業員の距離が近いケースが多いと思う。このような場合はお互いの関係性が良好な間は、それが生産性にもプラスに働くのだが、一旦その関係がおかしくなっていくと近い距離が直接的な憎悪になり易く、深刻な問題となることがある。経営者からすれば「会社にいてもらっては困る人」には一刻も早く会社を去ってもらいたいし、お金もこれ以上ビタイチモン払いたくないという気持ちが確かにはたらくだろう。一方で、従業員側の立場からすると突然、生活の困窮という局面に立たされるわけなので、そこについては法令に沿った義務の履行を強く求めていくということとなるだろう。

罰則と適用の例外

 ここで、従業員から抗議を受けた経営者が頑としてそれに応じなかった場合はどうなるのだろうか。労働基準法には罰則が設けられており、違反に対してその罰則が適用されることとなる。この解雇予告違反に対する罰則は6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となっている。つまり、法的には当然ながら絶対的な遵法が求められている。しかし、時として解雇に至るまでの理由にはどうしても許せないような場合も確かにある。例えば、事業場内での盗取、横領、傷害などの行為があったようなケースはどうだろうか。経営者はこのような一般的には看過できないようなケースまでも、即時解雇においては解雇予告手当を支払わう義務を常に甘受しなければならないのだろうか。実は労働基準法第20条には但し書きがあり、そのなかには「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においてはこの限りではない」とある。これは従業員の態様が非常に悪質であるような場合で、さすがに解雇予告などの制度で生活を配慮するに値しないと認められるようなケースが該当することとなる。ただ、ここで注意しなければならないのは、一般的に就業規則において懲戒解雇は即時解雇と規定されていることが多いが、懲戒解雇事由に該当する行為に対して、経営者の判断のみで予告手当なく、即時解雇をしてしまうことを労働基準法は許していない。労働基準法上では手続きの流れとして、原則、労働基準監督署で認定を事前に得る必要がある。事前に認定無く予告手当無しの即時解雇を行った場合は法違反ということとなる。一方で解雇の効果としては使用者が即時解雇に固執しない限りにおいては30日の期間が経過すると解雇は有効となるとの考え方が行政の立場となっている。

入口処理の重要性

 解雇予告、解雇予告手当に関して生じる問題は解雇という緊張場面のまさに入口で生じるトラブルだ。ここをこじらせると、感情的な緊張は更にエスカレートし、不当解雇の問題に飛び火することもあり得る。紛争の種火が業火とならないよう細心の注意を払い丁寧に進めていくことが肝要ではなかろうか。

 

原田労務事務所

未払い残業代の請求について

  • 2017.11.05 Sunday
  • 18:18

未払い残業代の請求

日々、会社経営者の労務相談を受けていると年に何回かは「辞めた従業員から未払い残業代の請求がきました」という相談を受けることがある。請求の方法は内容証明で来たり、FAXできたりと様々だが、100万、200万のなかなかの高額な請求でくることも珍しくない。

その際、必ず訊くのが「残業代を支払っていないということについては身に覚えがあるか?」ということだ。概ね次のような回答が返ってくる。「正確な時間数、金額はわからないが、いくらか支払っていないものもあると思う」私の印象では多くの場合において、正当な権利に基づいての請求で、有りもしない残業代を架空請求してくるようなケースは稀ではないかと感じている。しかし、その請求の細かな中身即ち実際に未払いとなっている具体的な残業時間についてとなると、お互いの目線の違いから、なかなか一筋縄には合意に至らない。問題となる場面をいくつか挙げると以下のケースが考えられる。

未払い残業代請求での争点

〇篭隼刻前から行われた作業時間の算定
⊆蠡圓岨間
申請なく行う残業
せ超隼間の頭打ち
セ超隼間端数の切り捨て
Υ泙濟超
 もちろん上記以外にも争点は多々あると思うが、とりあえず思いついたものを並べてみた。
,砲弔い討蓮△修虜邏箸会社から義務付けられていた又はこれを余儀なくされた状態であるときは労働時間と評価される余地がある。また、これ以外でも黙示の指示とみられる状況などがあると労働時間と評価される余地がある。

△砲弔い討癲具体的な作業に従事していなくても、業務が発生した場合に備えて待機している時間は労働時間と評価される余地がある。

については残業命令が無い時に従業員さんが自主的に作業をしている場合だが、勝手にやっているんだから支払わなくていいということには必ずしもならない。この場合、会社は残業での作業が必要でないことを従業員さんに伝え、作業を終えるよう指示すべきだ。それにも関わらず残業禁止を明示しないような場合は会社が残業による作業の処理を暗に指示し期待しているのではないかととられなくもなく、黙示の残業命令と評価される余地がある。

い浪饉劼任楼貭蠅了間までしか残業代を支払わないということを明示し、実際それ以上の時間の残業に対して支払わないというケースだが、一定の時間以上の不払いを明示しているのだから従業員が不払いに合意してやっているとの主張、もしくは一定の時間で十分終る作業なのでそれ以上の残業は生産性の低さにより生じるものだからこれを担保しないという主張等がその真意かと思える。しかし、労働時間は使用者の指揮命令下におかれたものと評価された時間をいうので、客観的にそのような常態であったと評価されれば労働時間と算定され、このような主張についても認められる余地は少ないかと思う。

セ超隼間の端数の切り捨てについては通達により一カ月のトータルにおいて残業代の30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げる取扱いについては賃金の全額払い違反とならないとあり、そのルールに沿った範囲でのみ切り捨てられる。

Δ砲弔い討蓮△修寮度の態様によって残業代を支払ったと評価されるものもあれば、否定されるものもある。ポイントとしては、給与の中のどの部分が残業代相当分かという明示をして労働契約上の合意が得られているかという点が重要だ。具体的には給与中の残業代相当分の金額、その相当する金額に充てられる時間、含み残業での設定時間を超えての残業時間が発生した場合の追加払い等についての明示が必要条件となってくる。また、最近の裁判例では45時間を超える残業時間を設定した含み残業は無効とするものもあるので、その点も考慮すへきかと思う。
 

通常より講ずべきこと

以上、労働時間について述べてきたが、やはり日々の労働時間管理をいかに几帳面にやっていくかということが肝心だと感じる。従業員さんが残業代の不払いを請求してきたときに、その未払い時間および金額が正当なものか否かを会社が判断するには、タイムカード、日報などがきっちりと正確に記されている必要がある。その点について何ら不安の無い状態なら、ここまで述べてきたポイントなども考慮し、請求額が妥当であるかの当否が検討できるかと思う。

 

原田労務事務所